本物をつくるー建築現場から Vol.033

土屋ホーム 圭幌エリア

道東での施工を二十年、風雪の現場も経験第一に

 企業内訓練校アーキテクチュアカレッジを卒業した技能士は、通常は札幌圏の現場で先輩棟梁の下で数年間の修業を積んだ後に、北海道内や本州など各地の現場に配属されます。今回ご紹介するのは、二十代初めに札幌を離れて以来、主に北海道東部の施工現場を担当している、ベテラン棟梁の指方輝之職長です。
 指方職長を訪ねたのは帯広市の現場。札幌から東へ高速で約三時間、日高山脈を越えたところに広がる十勝平野は、北海道の中でも特に、冬季の風雪の厳しさで知られる地域です。指方職長に厳冬期の施工について尋ねると、「どの地域でも苦労は同じ」と。ただし、吹き溜まりの雪が施工途中の現場に舞い込まないように、空気の通り路を少なくするなどの対策が必要なのだとか。風雪の現場に慣れているのは、十勝のさらに東に位置する根室管内での勤務が長かったからなのかもしれません。

  • 最後の仕上げの段階に入った現場。玄関土間の収納棚など建具を取り付ける
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 二十五年以上にわたって施工に携わってきた実績。指方職長は、「大工はとにかく多くの経験を積むことが大切」と経験の重要性を強調します。それは、カレッジを卒業して指導員の下で修業をしていた時期に経験したことが、今に生きていると感じているからです。

  • 指方職長と昨年十一月から共に働く吉川技能士
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 二十代の半ばで棟梁に。若くして施工の全責任を担う立場となり、自立心も養われたと言います。ですから、後輩の技能士たちへの指導も、要点だけ伝えて見守るという「放任主義」です。大工職人は自分で考えて行動しなければ、技術も上達しないということなのでしょう。そうした指方職長の思いは、昨年十一月から共に働く吉川拳司技能士にも届いています。吉川技能士からは、「考える時間が与えられて、タイミングよく助言をもらえるのがありがたい」と、棟梁に対する感謝の言葉も。
 現場に立つ指方職長の心に常にあるのは、お客さまが喜んでくださる施工をすること。そのために「大工は一生勉強」と、謙虚な心も忘れません。風雪のなかで、さらに経験を積む日々が続きます。